その昔、月と太陽は、天空にいつも一緒にいた。 
そのころの太陽は、月と等しく弱々しく輝くだけだったという。
そして、世界は太陽と月に照らされ、いつも薄暗かった。
同じくそのころは、女神にも男神と同じく立派な飾り髪があった。
女神の飾り髪は、男神のもつ深き穴よりも暗く黒い飾り髪と対を
なす、光輝く美しいものだった。
ある日、女神が昼寝をしていたとき、太陽がその飾り髪を盗んだ。
太陽が光り輝く飾り髪をつけると、その明るさで大地が明るく照
らし出された。
こうして昼は明るくなった。
気が付いた女神は激しく怒った。 恐れた太陽は月を押しのけて、
大地の影に隠れてしまった。
女神の怒りの叫びは、大地にいる皆を震え上がらせたという。
月は、やがて太陽と同じ天空にいる自分にも、その怒りが向けら
れはしないかと恐れ、太陽をつかまえるために、その後を追った。
月が大地の影に隠れると、世界はわずかな星の明かりだけとなった。
こうして夜と夜明け前の闇が生まれた。
月に追われた太陽は、大地の裏を通り、反対の大地からおそるお
そる顔を出した。 このとき、女神に見つかるまいと息を止めて
いたので、太陽の顔は真っ赤になった。 その顔が飾り髪に照ら
され世界は赤く染まった。
こうして朝は生まれた。
太陽が様子をうかがうと、女神は怒り疲れて眠っていた。
太陽はほっとしたが、月が追いかけて来たので、あわてて逃げ出
した。
太陽はあまりにも懸命に逃げたため、その顔は真っ赤に染まり
朝と同じように世界は真っ赤に染まった。
こうして夕方が生まれた。
太陽が再び大地の影に逃げ込んだとき、女神が起きて再び怒り
だした。
この出来事は今もずっと繰り返されている。

ライオンたちが、昼に眠り夜に起きて吼えるのは、彼らが女神
の子等だからなのだ。 だから、女にはたてがみがないのだと
古い話は伝えている。
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